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春を待つ声がする近江八幡

近江八幡で自転車をこいでいると、ひとりのおばあさんに声をかけられた。

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同じ自転車を買ったのかい?え?借りたのかい。そうか、そうか。私はてっきり仲良くお揃いにしたのかと思ったわ。ふんふん。今日の天気はましやな。一昨日は雪が降っとったけども、積もらんかったなー。畑のほうは積もったけどな。ようこんな田舎に来なさったな。大阪?また遠いところから。

昔はな、このあたりはそれはもう活気があって、番頭さんたちが朝から掃除していたけれど、今はもう観光用に留守番の人だけや。私はもうここに70年住んでいるけれど、よくなったのは道だけ。若い人はもういないし、せえだい、お金を落としていってや。そうすればこの町の人は生きていける。

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あら、麩の最中(もなか)はここだけよ。ちょっとゆっくりしていったら?この麩のカラシ和えは遠くの方からもみえるから、カラシをあまり入れていないの。地元ではもっとカラシ辛いのよ。麩の最中もおいしいでしょ?あら、両方買ってくれるの。ありがとう。えっ?おばちゃんが忙しそうですって?違うわよ。お客さんが忙しいから、おばちゃんが忙しいのよ。あら、そこの皆さんもここでゆっくりして行かれたら?あら、時間がないですって?それは残念ね。ゆっくりして行けばいいのに。

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今日は年に一度あるかないかのいい天気。ぜひ、上のほうまでお散歩ください。そうロープウェイのおじさんに声をかけられ登ってみると、北西には比良山系が、南に市街地、東に「西の湖」が見える。偶然にも雪が残っていて、キュッキュという音が気持ちがいい。風が雄たけびをあげて、空には悠々と飛ぶトンビ。何本ものびる飛行機雲は、白銀の翼を休める場所を指し示す。飛行機だって飛び続けられないのだ。

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チドリの仲間、タゲリがネコのような声をたてて飛び去ったかと思うと、藪の方からネコの苦しそうな声がする。どこかに挟まってしまったかと自転車をとめて急いで駆けつけると、そこには温かな藪に守られたお腹の大きなネコがいる。陣痛だろうか。苦しげな声の間隔が短くなっていく。お腹のわが子は苦しくとも待ってくれない。春はもうそこまできているのだ。

そしてもうひとつすぐそこまで来ていたのが車。慌てていたからか、車道に自転車をそのまま放置していたので、すぐさま自転車まで走りだす。でもなぜかゲラゲラと笑いながら。

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それにしてもこの飛行機雲の多さななんだろう。みんなそんなに慌ててどこに行くのだろうか。西の湖では春を待てずにサクラが咲き始め、オオイヌノフグリの花も寒風の中そよいでいる。そう。慌てている気配がそこかしこでするのです。

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もちろん誰しもゆっくりしたいけれど、出来ない理由がある。ボクたちは、それが「何故か」を考えることから始めることにしよう。清酒、湖東富貴(コトブキ)をかたむけながら。

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