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柚子屋旅館 一心居

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食すなら「おくどさん」で炊いたご飯がよい。

京都市右京区の水尾の柚子も楽しめると聞いて、柚子屋旅館の一心居に急いで予約を入れた。予報によると今日が晴れの日だから、「ハレ」の行事にふさわしいと思ったのだ。ヨシコはお腹がいよいよ大きくなって、昨日退職。そして本日、「ヨシコお疲れ様会」を開催するのだ。

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長谷川平蔵はええ奴や!

何も知らないヨシコは、最近夢中になっている小説、鬼平犯科帳について熱く語りだす。

ヨチュオさん、何でもお縄にかけたらええんとちゃうでぇ。泣きあり笑いありや。

そう言いながら、階下のパン屋さんで買い求めた卵パンを頬張っている。しかも、パン屋さんから、ジュース代わりに持っていきーっと、蜜柑まで手渡されているヨシコ。アンタ、すごいねぇ。

そんなヨシコを連れて京都へ向かう。四条に出るため、山崎でJRを降り、大山崎から阪急で河原町まで。島本では、梅が満開で見ているだけで匂いを感じてしまう。空には長い飛行機雲が横たわり、祇園四条の南座で中村の名前を見るなりヨシコは、

平蔵どこやー!

と叫んでいる。

ヨシコよ、中村吉右衛門さんは、南座に出演されてませんよ。

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めでたいねぇ。

八坂神社では、2組の結婚式が行われていた。ヨシコと目を細めながら、幸せをおすそ分けしてもらい、参拝。そろそろ燃料切れのヨシコ。

ヨチュオさん、今日のお昼ご飯はどうするの?

もう予約してありますよ。

えっ!どこ?

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そこから八坂神社の隣にある柚子屋旅館一心居へ。

階段をゆっくり上がるヨシコは大喜び。どうやら聞くところによると、前から来たかったところだったとか。偶然にも足を運べるとなって、夢心地。入り口を開けると、「おくどさん」と、雛人形がお出迎え。聞くところによると、この雛人形は明治からのものだそうで、とても可愛らしいものだった。柚子が山のように積まれた横をすぎ、庭園を見渡せる座敷に着席する。

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おいしい。

食前に日本酒をベースにした柚子酒をいただいたのだが、これがうますぎるのである。柚子のエキスがた~っぷりで、まるで果実そのもののようである。そして柚子鯛しゃぶ膳の一品目。おばん菜。どれもこれも素材の味がしっかりとしていて、味わい深い。

そうこうしていると、隣に73歳から83歳の四人組おじいさんが席につく。この人たちの楽しそうなおしゃべりが聞こえてきて、それがまた本当におもしろいのである。盗み聞きしているわけではないのだけれど、静かな店内だからまる聞こえなわけで、人生を重ねた興味深い話がどんどん飛び出してくる。

人間はなぁ、権力を持ったらダメなんだー!

まずは真面目なお話しからスタートです。

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二品目。

寒ブリとイカのお造り。イカは噛めば噛むほど味があって、びっくり。12月から2月が旬である寒ブリもいよいよ食べ収めかと、味わっていく。ヨシコの目もうっとり。

さてその頃、隣のおじいちゃん四人組は、てんやわんや。

ふきのとうって二つあったかー!

半分ずつしたいねんけど、最初に何個あったんや?

わし食べたかなぁ?

おじいちゃん達、何を食べたか覚えてられません。

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西京焼き、最強伝説。

三品目は、魚に春と書いて、鰆(さわら)の西京焼き。春が旬と思いきや、冬の鰆も脂がのってうまいのである。これはたまらんと、ヨシコともども頬っぺたが落ちる。

さてその頃、隣のおじいちゃん四人組は、西京ではなく南京話。

わしはなぁ、南京豆食ったら、糖尿病にならへんと聞いて毎日食べてるんや。

そうか、そうかそれはええなぁ。

どうや皆、今度はすっぽんを食おう。すっぽんを!

おじいちゃん達、まだまだ現役です。

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めでたいから、鯛を食そう。

四品目は鯛しゃぶ。柚子と鯛の粗(あら)を素揚げにしたもので出汁をとりながら、せり、みぶな、みずな、九条ネギ、みつばをさっと入れ、刺身でもいける鯛をくぐらせる。これまた美味。さらにこの鯛の粗の素揚げが、少し塩が効いていてうまいのである。

さてその頃、隣のおじいちゃん四人組は、ほろ酔い気分で粗探し。

この庭の岩はコンクリートですか?

いや、モルタルちゃうか?

どうかなぁ。

ふふふ、内緒です、とお店の方は笑います。

それにしてもここの料理はおいしいなぁ。

おじいちゃん達、お店の方の素晴らしい接客に夢中で、ご機嫌です。

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柚子がまるごと入ってます。

五品目は名物柚子雑炊。さっぱりとした風味といい、香りといい絶品です。日本は本当に素晴らしい国だと思う。四季折々の食材を楽しむ技と心を持っていて、それを五感で味わうのですから。

わしの息子は60歳になったというおじいちゃん四人組も本当に楽しそう。おいしいものを食べて、友達と笑いあう。生きるということは、それだけでおもしろいことだなぁと教えてくれるのです。

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黒糖の甘み。

最後にわらび餅を。やわらかな食感と、ほろ苦さがたまりません。ボクは雑炊の最後に柚子の種を噛んでしまったのだが、それもまたおいしく、そういえば幼少の頃は夏の終わりによくヒマワリの種を食べていたなぁと思い出し、同じような種であるインコのエサも食べてみたとヨシコに言うと、

わたしもね、犬のエサを食べたことがあるのだけれど、あれって全くおいしくないよねぇ。犬に同情したもの。

それは何とほろ苦い思い出。ボクも鹿せんべいを食べたことがあると言いかけたが、何とか沈黙と面目を保った。

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一緒に写しましょうか?

お店の方に言われて、ふたりしてカメラに収まった。いつもは道路のミラーを使って記念写真を撮るふたりだけれど、めでたい日ぐらいはいいかなぁとご好意に甘えた。いつも忙しい会社から帰って、疲れているだろうにおいしい夕食を準備し続けてくれたヨシコに感謝。それも昨日で終わりだけれども、これからもおいしい食事をつくってくれることだろう。

ヨチュオさん、今日は「ヨシコお疲れ様会」ありがとう。

はい。どういたしまして。

今度もしヨチュオさんが無職になったら、「ヨチュオさん、早く働かん会」しましょうね。

はい。そうしましょ。

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ヨシコのお腹の中で子どもがブルルン!と動く。この子もそう思っているのだろうか。すると庭園にひよどりが舞い降り、水浴びをしては、梢にとまる。その水の流れいく先には赤い金魚が冷ややかな水の中でじっとしている。小さな命を前に思う。生きるということは、それだけでおもしろいことなのだ。

つづく。

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