カマキリの午後
ボクは涙した。
悲しいからではない。体のどこかが痛いからではない。ただ単純に、玉ねぎが涙腺を刺激するのだ。涙でかすむ刃先を見ながら、玉ねぎを切っていく。両親が畑で育てた土つきの野菜を、どうにかおいしくいただけないかと考えながら。
ちょっと一休み。
植えたパプリカにいつもいるカマキリに挨拶して目の前の八百屋さんへ。足らない食材を買おうと店内に入ると、もう産まれたかと聞かれる。まだですよ。予定日は23日なんですよと答えると、八百屋さんのカレンダーの23の文字に赤ペンで花丸がついた。
奥さんに栄養つけてあげてねと、桃、夏みかん、漬物をくれる。パン屋さんに行っても、奥さんに栄養をつけてあげてねと、どんなに断ってもパンをくれる。何だか申し訳ないが、感謝の気持ちでいっぱいだ。
ヨシコは風でふくらむ白いカーテンの下でお昼寝。
ボクはその間に何をつくろうかと本棚を見ていると、「ひとつの鍋から幸せひろがる」と書いてある料理本を発見。これしかない!と野菜の重ね煮をつくることにする。
アン・サリーと、ヒヨドリの声聞きながら、鍋の底に塩をふり、切ったトマト、その上にじゃがいも、先程の玉ねぎ、にんじんを重ねていく。そして上から塩少々。おいしくなってくださいと手を合わせたなら、蓋をして、弱火にかけるだけ。
火を止めるタイミングはいい香りがすればよい。
本にそう書かれてあるのでのんびり待ってみる。鼻がかゆいのでかいていると、指先についていたであろうニンジンの匂いがこびりつく。あわてて顔を洗う。他の野菜のいい香りを逃してはならぬ。だって最高の状態で火を止めるのだから。
そこから少しするといい香りがしてきた。
それは焼きたてのパンの匂い。どうやら下のパン屋さんが午後の支度をしているらしく、あわてて玄関をしめる。いつもなら大歓迎なのだが、今日ばかりは野菜のいい香りを逃してはならぬ。だって最高の状態で火を止めるのだから。
おいしいよ、ヨチュオさん。
起きてすぐに食べれるヨシコが重ね煮を快食する。ひとつの鍋から幸せがひろがります。塩と野菜のうまみに、胡椒を少し。油はもちろん入りません。体の中から元気になる味を堪能したならば、デザートにいただいた夏みかんを。
そして枝豆をざっと洗い、塩ひとつかみを加え、産毛をこするようにもんだならば、好みの固さで茹で上げる。この熱々を昼間の楽しみ、ビールのあてにしてのんびり過ごそうと決めこんだ。
あら、私のためにありがとう。
おかしい。ヨシコの手が頻繁に伸びてくる。夏みかんを食べたはずなのに、枝豆もしっかり食べる。これはきっとヨシコリの分なのだろう。今は、二人分しっかり食べて、その後、リラックスが一番なのだ。
カマキリのメスはオスを食す。
同じ種類でも体の小さいオスが体の大きいメスに共食いされてしまう場合があるのだ。それは産卵にむけての力をつけるためでもあるらしい。ヨシコの食欲を前に、我が家のパプリカにいるカマキリを思い出しながら、人間で良かったなぁと、ふと自分が着ているTシャツを見ると・・・。
げぇえ!カマキリがデザインされたTシャツ着てた!
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コメント
いいなあ~!!
パパの準備万端ですね。
野菜の重ね煮、私もいただきたいです。
以前、長野県飯田市に移住され
「小田切自然熟」という民宿をされてる方のお料理を頂に
日帰りでランチに長野までダッシュ!!してきたことがあります。
その時のお料理が未だに忘れられません。
お店でもいつか研修に行きたいと話しつつ
皆で日帰りダッシュは無理かと・・未だ実現してません。
愛情一杯のご馳走と周りの人たちの一杯の愛情を受けて産まれてくるヨシコリちゃんは本当に幸せですね♪♪
それもこれも両親の人柄あっての事ですよ。
リラックスして美味しいもの食べて元気なヨシコリちゃんが産まれてくるのを待ちましょう♪♪
カマキリでなくて良かったね(^_^)v
投稿: ほっとママ | 2009年6月15日 (月) 15時04分
ほっとママさま
先程、「リンゴが教えてくれたこと」という木村秋則さんの本を読み終え、ますます畑をしたくなった我が隊としては、いつか自分たちでつくった野菜で重ね煮をつくり、ぜひぜひ食べていただきたいなぁと思っています。
そして枝豆をつくり、ビールをぐびぐび。
…想像しただけで、お腹が空きました。
それにしても小田切自然塾のランチに興味津々です♪
日帰りで長野でランチとはすごいです。
ぜひ研修を実現させてくださいね!
そして比良で食べさせてくださいね(笑)
今日も皆様のおかげで、ヨシコリは元気に踊っています。最近、駅前の自転車置き場のおじさんたちも、ボクの顔を見るなり「おはよう」と言わず、「カウントダウ~ン!」という挨拶に変わりました。
あとはヨシコが産もうとする力と、ヨシコリが産まれようとする力を見守ろうと思いま~す!
ドキドキです。
投稿: セカチノフ | 2009年6月15日 (月) 23時55分